「ま、そりゃシンと俺様は固い絆で結ばれてるからなー」

「……冗談で言ってるのよね?」

「冗談だぜ?」


ほう、と安堵のため息をつく。
加奈子はなんかわかってない様子だけど、さっきのを文字面通り受け取ると、なんか危ない気がする。


「まぁベースはじっくり探しますよ。めぼしい奴にはシンが声かけてくれるみたいだし」

「アンタ人任せか」

「あざちゃん、ちょっとキツくない?ちゃいますよー、適材適所!」


って、金髪は言うけど、なんか言い訳にしか聞こえない。面倒なことは、人任せな感じで。


「シンさんって、何か寡黙な感じしたけど、あの人に任せて大丈夫なの?」


加奈子、アンタも私と同じ見解か。

性格上、金髪のが勧誘には向いてる気がするし、なんだか知り合いも多そうだもんね。


「いや、俺様よりシンのが顔は広いぜ?なんだかんだで、この業界も長いからな」


アマチュアを果たして『業界』というくくりにして良いのか、というツッコミは保留。
ってそれより、


「アンタもシンさんも、バンド活動始めたばかりじゃなかったの?」


加奈子からはDandeは結成して間もないって聞いた記憶があるんだけど。


「んぁ?俺様は最近だねー。けど、シンさんは違いますよ?元々、他所のバンドのドラマーだったのを無理言って組んでもらったんだ」

「それって引き抜き?よく応じたわね」


今あるバンドから、何もない所に行くメリットなんてないだろうに。
それほど巧く勧誘したのか、はたまたそれほど以前のバンドが嫌だったのか。

そう思った私に「ちゃうちゃう」と金髪は首を振った。


「声かけるちょっと前に解散してんだよ、シンのバンド。だから引き抜きって訳じゃねーのよ」

「ああ、そうなんだ」


解散、っていうのを簡単に流してもいいか迷ったけど、アマチュアならよくある話なんじゃないかと思う。それに、シンさんの前のバンドが解散した経緯なんて知っても仕方ないし、金髪も知らないだろう。
その頃には、まだホントの他人同士だったんだろうし。