野良ライオンと文系女の猛獣使い

「でも、そういう話じゃないなら、どういう話?本格的に、音について語り合ってたとか?」

「あー…」


なんと言って誤魔化そうか、一拍ほど悩む。
これ以上話をややこしくしたくはないのだけれど、どういえば言いかな?


「え、と。……その、音が足りてないんじゃないかなー、って」

「音が足りない?……あぁ!確かにギター二人だけって寂しいもんねっ!」


考えながら、ぽつぽつと紡いだ言葉に、加奈子は特に疑問を持たなかったらしい。元気よく相槌を打ってくれる親友に、少し感謝する。
それと同時に、もう少し人に疑いをもつべきだとも思ったんだけど。


「メンバー増やしたりしないの?」

「しますよー。つーか、したいよー。でも、なかなか見つからないんだよなー」


テーブルに突っ伏した姿勢のまま、加奈子の質問に金髪が答えた。

ふぅ。どうやら二人とも、ユリ云々の話は忘れてくれたみたい。


「創って間もないからしゃーねーとは思うんだけどよ、やっぱバリバリ活動したい訳さー。んでも、意気込みに実力がおっついてないっつーか、せめてベースがいればもうちょいイケると思う訳です」

「ベース?そしたらギター2、ベース1のバンドになるの?」


会話を金髪に合わせる。
ここまでしとけば、会話が逆行することはあるまい。

それに正直な話、ちょっとだけこいつのバンドの話には興味があった。


……いや、普段聞けないような話って意味でよ?他意はないからね。


「んー……。それでもいいけど、やっぱギター、ベース、ドラムになるんじゃねえの?」

「ドラムが入る予定はあるんだ?」

「や、元々シンさんの本職がドラム。今は人数少ないし、しゃーねーっていう感じにやってる」

「へぇ」


言われてなんとなくシンさんの姿を思い出す。
鮮明には思い出せないけど、がっちりしていたような気がする。やはり、肉付きがいい方が向いてるのだろうか?