野良ライオンと文系女の猛獣使い

「二人っきりで、何の話をしてたのかなっ?」


何故か嬉しそうに言う加奈子の為に、席を空けてやる。
「ごめんねー」と言いながら自分の席に戻った彼女は、通りかかった店員に追加注文をしてから、こちらへと振り向いた。


「何でそんな興味津々か知らないけど、大した話はしてないわよ?」

「そーそー。せいぜい花の話をしたくらいかにゃー?デヒャヒャヒャ!!」

「花?」

「んーふふ。主にユリ科の──」

「タンポポ!タンポポの話をしてたのっ!!」


余計なことを口走りかけた金髪を遮って声を上げる。

チラリとうかがった金髪の表情は、やはりいやらしい笑みだったりしてちょっと苛立つ。


「タンポポって……あぁ、レオ君のバンドの」

「あー、そうそう!」


咄嗟に出した適当な花の名前は、そう言えば金髪のバンドの和名だった。
いや、だからこそ咄嗟に出てきたのかもしれない。この時の私にすればどっちでも良かったけど。


「で、どんな話?他では聞けない、バンドの裏話みたいなヤツ?」


なんか期待してるとこ悪いが、そんな話はしないと思う。
そういう裏話的なものが、この金髪には存在しなさそうだから。


「ふっ……この謎の美少年に向かって、裏がないとは言ってくれる」

「レオ君に無くても、シンさんの話とかさー。他のバンドとの交流とかそういうの」

「ちょっ、俺様は無視ですかい!?」

「少なくとも、少年じゃあないよねー」


阿呆なことを口走った金髪に、加奈子が容赦なくスルー、そして撃墜という荒業をやってのける。

せっかくだから私からも一言。


「謎の。っていう程、謎が多そうじゃないしね。開けっ広げじゃないかアンタ」

「ぐっは!?」


とりあえず良くわからん悲鳴を上げて、金髪はダウン。
うん。こいつが黙ると、平和になった気がするわ。