野良ライオンと文系女の猛獣使い

「つーか、ちょっとそっち系の人かって訊かれたくらいで狼狽え過ぎじゃね?」

「……なんの脈絡もなくそんな質問されたら誰でも焦るわよ」

「そりゃそーかも知んないけども、そうゆうの、ホントにそっち系な人に対して失礼かもよ?」


金髪の言わんとしてることは分かるし、私自身、そっち系な人に対しては別に差別的な意識は持ってないんだけど。
それでもほら、不意を突かれたっていうかさ。
金髪からそう見えるなら、加奈子からもそう見られてるかも知れないって思うと、動揺しちゃうのよ。


「そんなもんかね?」

「アンタだって同じようなこと言われりゃ、取り乱すんじゃないの?」

「あー、いや。俺様は別に。好きなもんは好きなことに変わんないからよ、そうとられることがあってもしゃーねーかな、って」

「……アンタがそっち系かい」

「あ?問題あるかにゃ?つか、まあ、出来れば女の子の方がいいって思ってる辺り、完璧にそっち系とは言えないんでない?」

「ホント節操ないな、アンタは」

「誉め言葉として受け取っとくにゃーん」


うひゃひゃ、と下品な声を付け足して笑う。

正直、どこまで冗談なのか判断出来ないっていうのが、少し怖い。
性別関係なく、誰かを好きになれるってことは結構凄いことだと思うのに、コイツ相手にそういう評価を下してはいけない気がした。


と、そこで──、


「たっだいまー!」


加奈子が帰ってきた。