野良ライオンと文系女の猛獣使い

「アンタ加奈子狙いじゃなきゃ、なんだっていうのよ?」

「うふー。なんに見える?」

「だから加奈子狙いにしか見えない」


はっきりと言ってやる。
のらりくらりかわされてはかなわない。

対して金髪は大袈裟にため息をつくと、肩をすくめた。


「カナちゃんとは、友達になれりゃ楽しいかもな、って思っただけ。それ以上っていうのは、『今のところは』ねえよ」


今のところは、という辺りをわざとらしく強調して金髪は言う。
つまり、この先は手を出すぞ、ってこと?


「にゃ?いや、その辺は成り行きだしょ」

「成り行きでそうゆう展開に持っていけると思うなよ」

「こえー!?あざちゃん、さっきから無茶苦茶こえーんですけど!?」


相変わらずにやつきながらの声に「ふん」と鼻を鳴らして、顔を背けた。


「そもそも、こないだの間男宣言からして加奈子を狙おうってのがありありだったじゃないの。そんなのに警戒心を抱かない方がおかしいの」

「あー、アレなー。冗談のつもりだったんだけど」

「アンタが言うと冗談に聞こえない」

「えー、なんでよ!?つか、あんな風に堂々宣言するバカなんていねーぜ?その辺で『あ、冗談なんだ』とか思うっしょ、普通は!!」

「……アンタが普通を語るか」


ジロリと睨んでから、お茶に手をつける。
ぬるくなってしまって、あまり美味しくなかった。


「とにかく、加奈子には手を出させないから」

「……あざちゃんって過保護?」

「別に」


む、と金髪が一瞬怯む。

ここまで本音というか、なんというかな物を暴露してしまったら、変に気を遣う必要もないでしょ。


うん。コイツには気を遣ってやらない。


それは最初に会った時から、遠慮が必要なさそうな人種だと思ったからなのか。
それとも、コイツの『軽薄な笑顔』に自身の認識以上の苛立ちを感じているかも知れないからなのか。


いずれにしろ、一度外れてしまった枷は、きっと二度とは戻らないと思う。