野良ライオンと文系女の猛獣使い

「んあ?」
「……っ!?」


そんな風に思考していたせいか、金髪が不意に顔を戻した時に、咄嗟に反応出来なかった。
にもかかわらず、意図せずして目が合ったもんだから、端からみたらまるわかりになりそうなくらい、動揺してしまった。

当然、直に見つめ合う形になった金髪には、私の動揺なんて手にとるようだったろう。


「あー……」


と、なんだか投げやりな声を出しながら、タバコと私の顔を交互に見比べ、


「一本吸う?」
「未成年です」


反射的に断っていた。

金髪が『あれ?』という表情に変わる。


「ずーっと見てるから、欲しいのかと思ったんだけど?」

「み、見つめてなんかないっ!」


って、これまた反射的にウソついちゃったよぅ!
こういうのって、ウソついた方が気まずくなるのに!


「にゃ?ま、いいか。つか、あざちゃん大学生だよね?」

「そ、そうだけど?」

「今の時期で未成年ってこたあ、19?1年生か」


何故か勝手に話題がそれた。
ふぅ、と一息ついてから「そうよ」と告げる。

金髪の顔には、いつの間にか『あの笑顔』が戻っていた。


「19かー。いやーん、ピチピチ!エロエロやね!」

「いやまて、ピチピチはわからなくもないけど、え、……エロエロって」

「え、にゃにー?聞こえにゃーい!デヒャヒャヒャヒャ!」


段々、尻すぼみになっていく私に、金髪の笑い声が被る。

くっ!コイツ、腹立つ!


「つーか、アレか。じゃあカナちゃんも19か」

「……そうだけど」

「む?あざちゃん、何か怒ってない?」

「怒ってない」

「こ、こえー!ぜってぇ怒ってるし!」


恐い言いながら、金髪の顔には相変わらずの笑顔が貼り付いていて、それが余計に腹立つ。