五月蝿い。


ぬくぬくとした布団から右手だけを伸ばして、音の発生源を掴んで投げた。

起きろ起きろとはやし立てる物体は、壁に直撃して泣き止んだ。
代わりに何かが砕ける音がしたが、今の私の意識にはとまらない。


静寂が部屋を支配する。

覚醒しかけた意識は、再びまどろみの中へ。


……………。

…………………。

………………………。

……………………………眠いんだけど。


「……五月蝿いし」

静かになったハズの部屋には、ケータイの着信音が響く。


アラームなら無視だけど、さすがに着信を無視する訳にはいかない。

ディスプレイには友達の名前。時刻表示は5時56分。


……こんな時間に、非常識な。


「もしもし?」

『おー、ホントにかかった!もしもしオハヨー。あのさ、中間試験の範囲が終わんないから、宿題写さしてほしいんだけどー?』

「……ん、わかった」

『あ、ねえちょっ──』

眠いし、どうでもいいことなので、適当に流して通話終了ボタンを押した。


「……寝よ」


再びまぶたを閉じて──



ピリリリリッ!!!とやかましいアラーム音に、目を覚ました。