Infinity blood ~孤高の吸血鬼は蒼い月夜に踊る~


口の周りにも。

手のひらにも。

足元も。

すべからく赤い鮮血に塗れた闇のモノ達が、見上げた先にある顔を見てゴクリと息を飲んだ。

逃げ出そうとする輩たちを見据え、青年はほほ笑みを浮かべて見せた。


「さぁ、踊ろうか、諸君」


銀色の剣を右手に構え。

左手でその刀身に刻まれた文字をなぞる。

青年が這わせた手に沿って、文字が赤く浮かび上がるように刀身を染め上げていく。


「我が闇を穢した罪を拭うために」


青年の足が軽やかに屋根を蹴り、宙で2回転する。

鮮やかに白の円が宙で描かれ、銀色の光が残像を残すかのようにきらめく。


「一緒に『死の円舞曲(ワルツ)』を踊ろう」


まるで手を差し伸べるように、青年の剣がそれに突き刺さる。

踊るように地を滑る。


「う……ぐぐ……」


喉元に刺さった剣が最後の声さえも漏らすことを許さない。