青年はピタリと足を止めた。
それからゆっくりと下をのぞき見た。
暗闇の中、何かがもぞもぞと蠢いていた。
一つ……ではない。
真っ赤な水溜りに横たわるモノに、群がるモノ達。
何かに貪りつき。
陰湿な音を立てながら、貪欲に飲み込み続けている。
骨を砕く音。
生肉を引き裂く音。
血が飛び散る音。
それらが重なり、不快な和音となる。
青年はその和音を聞くと。
にやり。
赤い唇に笑みを乗せた。
指を立て、一心不乱に貪りついているそれらを数え始める。
「一つ。二つ。三つ……五つか」
皮のグローブがギュッと乾いた音を立てる。
その音に、暗闇で蠢いていたモノ達が顔を上げた。



