彼の緑の双眸には苛立ちが募っていた。
ファルスはそれと対峙しながら
ぎゅっと強く主人の身体を抱きしめた。
二人を守るように
蒼い月の光の羽が包み込み
黒い艶やかな髪と銀の髪がひと際まばゆく艶めいていた。
「蝙蝠族の王子、ファルス=レピジェンド。
純血なる闇の王を守る一族最後の生き残り。
やはり完全に命を断っておけばよかったのに、彼女の力は無力な王にそれでも傷つけられていたか……」
ため息とともにロシュナンドはそう呟くと
ファルスから目を背け空を見上げた。
遠くで雷鳴とともに轟音が響く。
稲光はロシュナンドの深い緑の瞳の中で何度となく瞬いた。
「牙を持ちながら無力な王にいつまで従う?」
チラリ……横目でファルスを見つめ
ロシュナンドはそう問うた。
しかしファルスは一切の返事をせず
ただ二人の間には身を引き裂くほどに冷たい風が流れるばかりだった。
「私と彼女はその無力な王になり代わり
新しい時代の覇者となる者。
ともにその時代を見ようと心を移すならば
オマエだけは許してやっても構わないが」
『どうするかね?』
ロシュナンドは言いながら
真っすぐファルスに向き合うように
ゆっくり身体の向きを変えた。



