ファルスの掌の中で黒とも赤とも見紛う水晶石が鈍く光っていた。
闇を割くように
ファルスの傍らまで光の腕を伸ばした月は
その掌をゆっくりと照らした。
瞬間、断末魔の叫び声を上げながら
水晶はキレイにその姿を消した。
残るのは白い煙と肉を焼くような臭いだけだった。
「では、ご命令通りに……」
月に向かって深々とお辞儀をすると
ファルスはその背に広がる闇色の翼を大きく羽ばたかせた。
バサリ、バサリと宙を切り裂く音が響き
それにつられる様に月が彼の背を照らす。
「ともに王の元へ……いらっしゃると……」
一人納得したように頷くと
ファルスは眼前を見据えた。
視線のずっと先に
銀と金の色が交互に激しくぶつかり合いながら
美麗な円を描き闇夜に浮かんでは消えていく。
「どうやら……すでに交戦状態のようですね」
主人に何かあることはないと思いながらも
ファルスの内心はさざめく波のように揺れていた。



