赤レンガの崩れた建物たちが並ぶ、しんと静まり返った街の屋根が徐々に月の光で姿を現した。
その屋根の上に座る影に
蒼い月はまるで愛おしい者を抱くかのように、光の翼で触れていく。
蒼い月の光に
誘われるようにそよぐ冷たい風に
銀色とも白色とも思える短い髪がさらりと揺れる。
「お仕事しておいでって……月(マザー)は人使いが荒いねぇ」
ため息とともに、その影がゆっくりと瞳を開く。
闇の中で、まばゆく輝く金色の玉。
2つの玉は振り返り、蒼い月を見上げる。
すると、月の光を吸い込んだ金色の瞳はさらに輝きを増した。
切れ長の瞳に悪戯な色が浮かび。
月から闇夜の中へと再びその視線が戻る。
褐色の肌の美貌の青年は、流れる髪を鬱陶しそうにかきあげる。
それから黒い皮のグローブをはめた手で、脇に置いていた剣を取った。
鞘のない銀色の刃がむき出しの剣の刀身には、何かの呪文であるのか。
多くの文字が彫り込まれていた。
蒼い月の光に銀色の刀身が鈍く、鈍く光を放つ。