光の帯はその幅を太らせるように翼を開いていた。
凛と冴え渡る空間に
ひと際甲高い声が響き渡る。
「月(マザー)が彼を激励しているのか……」
チッとロシュナンドはその相貌には不釣り合いな舌打ちをして見せた。
苛立つように親指の爪を噛み
光が伸びる様を見つめていた。
夜の王が降臨したその空には
先ほどまではなかった蒼い月が姿を見せ
ほほ笑むようにうっすらと滲んでいた。
闇は王の降臨に打ち震え
歓喜の声を上げるかのように
強い強い風を呼んだ。
それに呼応するように風が吹きすさび
ロシュナンドの髪を引っ張った。
緋色のマントがバタバタと激しく唸り
その身が風に持っていかれそうになるのを
ロシュナンドは踵を土の中に埋めるようにして回避した。
「王などいなくなればいいだけの話」
夜が呼ぶ王などこの世界には必要ない。
ロシュナンドの中では頂点は一人だけである。
紛い物である麗しい鬼など要らないのだ。



