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緋色のマントがゆらり、ゆらりと揺れていた。
重苦しい闇の中に、そのマントは血色に輝いて見えた。
いや、実際。
それは元々白色だった。
けれど、多くの血を吸いこんだそれは
元々の美しいまっさらな色を失ってしまっていた。
狂気と悲鳴が詰まったマントを
いつくしむような瞳でロシュナンドは眺めていた。
「来るか、ディーノ=オルケノス」
彼の言葉に反応するように
彼の一歩後ろあたりに立つ獣が唸り声を上げた。
満たされぬ欲望を
枯渇した喉を
潤すための生贄が暗闇を引き裂くようにやってくるのを
獣は待ちこがれていた。
見つめる視線の先。
遠い、遠い夜の空。
星は見当たらない。
黒い色の絵具がぶちまけられた何もない空に
青とも白とも言い難い
光の帯がうっすらと姿を現していく。



