Infinity blood ~孤高の吸血鬼は蒼い月夜に踊る~


「キミのお兄様は『太陽の聖騎士』の血を取り込んで
もはや人であることを辞めてしまった。

オレは『純粋でない存在』を消さねばならない。

それがこの血に課せられた運命なのだよ、お嬢さん」


琥珀色に滲む闇色が一層増し
暗い空間に冷たい白い息が落ちる。

閉ざされた空間がミシリ、ミシリと軋んだ音を立て
その軋みに床が僅かに上下する。


少女はソファに坐したままディーノをただ見つめていた。


「父が嘆いているよ、シュレーヌ?」


名を呼ばれた少女はその瞬間
わっと声を上げ
机に伏して泣いた。

おそらく、ディーノの答えは想定していたのだろう。

が、どこかでそう諦めきれず
藁をもすがる想いでやってきて
願いを口にしたのだろう。

けれど現実はやはり無慈悲で
シュレーヌの想いは打ち砕かれることになってしまった。


ディーノは目の前で伏して泣く少女が憐れに思った。


ダウルレードの当主夫妻は
数年前に何者かによって惨殺されている。


それがリザネロであるのか。
はたまた若き当主であるシュレーヌの兄であるのか。

そのあたりはディーノには想像することしかできないが
それでも彼女は兄一人に頼って今まで生きてきたのだろう。

兄に依存した分
失意は大きなものであろうくらいは理解が出来た。