カツカツとブーツの踵を
わざと響かせるように歩きながら
ロシュナンドは自分を呼んだ相手のいる方へと近づいた。


『ロシュナンド……』


はぁ……はぁ……

荒い吐息が一枚扉を隔てたその向こうから聞こえてくる。


「大丈夫」


彼は扉に額を当て
声の持ち主をなだめるようにそう言った。


「その苦しみ、私が近いうちに
取り除いて差し上げます」


愛しい相手を見つめるように
うっとりとするほど妖しい笑みをたたえ
ロシュナンドは囁いた。


扉の向こうからは
相変わらず荒い息と
バタリ、バタリと床をのたうちまわるような
地響きにも似た音がしていた。


「ああ……出来ることならば。

私が代わってさしあげたい」


そう言って
ロシュナンドは扉を愛撫でもするように
扉を撫でまわし
そこにそっと唇を押し付けた。