雫が剣先を濡らした瞬間。
高い金属音がその場に響き渡った。
まるで紙を破るかのような
空気を引き裂くような音に
ディーノは苦笑しつつ、剣先に舌を這わせた。
真っ赤な舌が
同じく赤い雫を舐めとる。
艶めかしいその舌先に
赤い雫は待っていたとばかりに
そこへ引き寄せられていった。
ゴクリとディーノは雫を深く飲み込むと
ファルスを見遣った。
ファルスは無機質な表情のまま
背筋を伸ばし、ディーノを見つめていた。
「相変わらず、おまえの血は甘いな」
そう言ってディーノは艶やかな笑みを
ファルスに贈る。
ファルスは「光栄です」と静かに頭を下げた。
「だが、朝からあまりレディを興奮させてくれるなよ」
困ったような口調をするディーノだったが
その瞳は楽しげにゆれていた。
涼しげな瞳に
妖しい色が折り重なって行く。



