「お目覚めですか、ディーノ様」
音もなく背後の扉が開き
一人の青年が入ってきた。
艶やかな長い黒髪を
肩のところで一つに束ねた細身の青年。
磁器のように青白い肌に
薄紅色の唇が小さな薔薇の花のように浮かび上がる。
切れ長の瞳は髪と同じ黒曜石の色。
筋の通った高い鼻は知的な雰囲気を
さらに深めるものだった。
深い闇の色のスーツに身を包んだ青年は
白い手袋をした右手を胸に置き
ディーノと呼ばれた白銀色の髪の青年に
深く頭を下げた。
「やぁ、ファルス。今日は起こしてはくれなかったねぇ」
言いながらディーノは
黒色の青年ファルスに笑みを向けた。
ファルスは薄いほほ笑みを唇の端に乗せると
「昨夜はずいぶん遅かったようでしたので」
と返した。



