【完】君の笑顔






少しは僕や看護師達の気持ちも考えて抜け出すの止めてくれると嬉しいけれど。



でも、この想いは言う事ができずに呑み込んだ。



すると岡本さんは動きを止めて僕を見る。



え?何?



もしかして今の。



呑み込んだつもりが口に出てた、とか?




岡本さんが怪訝な顔をして僕を見ている意味がわからず、とりあえず首を傾げながら見つめ返す。




「何してんの?
この状況分かんないの?」


「え?」


やっぱり僕は呑み込めていたらしい。

この状況……?


「着替えたいから出ていってくれる?
……見たいの?着替えてるトコ」


眉間に皺を寄せながら言われ、気付く。



あぁ、着替えか。


よく見れば、着替えを持ってるし。



「あ、すみません」



慌てて立ち上がれば椅子が大きな音をたてた。




「……検査で何回も見てるから気にしないって事ですか」




カーテンの外へ出ると、中から嫌味っぽく言われる。




「そんなつもりじゃ……ちょっとボーっとしてただけです」



言われるまで全く気付かなかっただけなのに。