「高橋先生」



医局で仕事をしていると、看護師に呼ばれて顔を上げる。



「横田さんがいらっしゃってますが……」



僕が用件を聞く前に、看護師は笑顔のまま告げてくれた。



「あ、はい。行きます」




立ち上がって早足でエレベーター近くの長椅子の方へと歩いていく。




「高橋先生」



僕が傍まで行くと、僕に気付いてにっこり笑いながら立ち上がった。



「お久しぶりです。あ、座ってください」




僕も笑いかけて座るように促すと、ゆっくりと腰を下ろす。



僕も、その横に腰を下ろした。



「今日は……定期健診ですか?」


「はい。あ、でも私じゃないんですよ?この子の健診で」




そう言いながら横田さんは視線を下へ落とす。



僕も、横田さんの腕の中にいる赤ちゃんへと視線を向けた。



ピンクの可愛い服を着て、寒くないように包まれている赤ちゃん。



目はパッチリと開いていて、小さい手を空中で動かしている。



「わ……可愛い」


「クス……ありがとうございます。良かったね」



覗き込むと、目が合ってじっと僕を見つめてくる赤ちゃん。



誰この人?なんて思ってるのかな。