もう、傷なんか気にしなくて良いから。



「……高橋?」


「ん?」


「……あたしも……高橋が好き」



小さいけれど、ハッキリと僕の耳元で聞こえた。



同時に僕に回っている腕に力が入る。



岡本さんの心音を感じる。


生きてる、って言ってる。


もう、死んだほうが良かったなんて言わせない。


生きてて良かったって何度も思わせてあげる。


これから楽しい事を、いっぱい作ってあげる。



だから……良いよね。もう。



まだ岡本さんは退院してないけれど、ここは病院じゃないんだし。


腕を緩めて岡本さんとの距離を少し取る。




邪魔になる眼鏡を外してから、無防備な表情で僕を見ている岡本さんに



ゆっくりと唇を重ねた。



一度離れて、ほほ笑み合う。


愛しくて。


今度は、僕からとか岡本さんから、とかではなく。


どちらからでも無く唇を重ね合った―――