僕は、岡本さんの傷口を服の上から人差し指で触れないようになぞった。



「ここに、傷がある」


下を向いて僕がなぞった後を見つめる。


「僕が、傷付けた」


直接、僕が。



「……ごめん。傷付けた」


何が理由であっても、傷付けたのは僕。


切った時の感触を思い出せば、胸が痛む。



「しょうがないよ。治す為だったんだし……
それに、こうなったお陰で良い思いが出来るようになったって事も分かった」


涙目で笑顔を向けてくれる岡本さん。


やっと、傷について前向きな発言を聞くことが出来た。


「こんな傷があっても、高橋はあたしを好きだって言ってくれるの……?」


……こんな傷、なんかじゃない。

僕は岡本さん胸へと顔を寄せて、服の上から、そっと傷口に口付けた。


「言ったでしょ?本当に好きならそんな傷気にしない」


これは、岡本さんが頑張った証。

沢山我慢して、沢山辛い思いや苦しい思いをして、そして克服した証。


病気と、一生懸命闘った証。


それを、悪く思う人なんているの?


それに……岡本さんを好きだと実感すれば、その傷もすごく愛しい。


顔を上げようとすれば、僕の首へと腕を回して抱きついてきた岡本さん。


僕もゆっくりと背中に手を回す。