「……寂しい?あたしが居なくなって」




次々に林檎を口に入れながら、僕に聞く心。




「……いや?やっと“医者”の仕事に戻れるんで嬉しいです」



淡々と答えると、ムッとした表情になる心。



ムカつく……とでも思っているんだと思われる。



「何それ。医者の仕事って」


「岡本さんと一緒にいる時は殆ど医者がするような事してませんから。脱走したのを探したりとか」



動物園の飼育員よりも探した回数は多いだろうね、そう笑顔で言ってあげると無言で睨まれる。



「コレもそうじゃない?」



ナイフを布巾で拭きながら軽くあげる。



「……あ、キウイも剥いといて」



こう言いながらも僕に“医者”がしない仕事を指示してくる心。




多分僕は未だに医者として認められていないんだろう。


……仕方なくキウイに手を伸ばす。


悔しいからキスの一つでもして立場逆転してみようか。


そんな考えも浮かんでくるけど、ここは病院。グッと堪える。



「はいどーぞ」


キウイも皿へと入れて、手と使ったナイフを拭きながら立ち上がる。



そろそろ行かないと。