「今日、夕方入浴出来るから、多分看護師さんが呼びにくると思う」



手早く消毒を終えて、背けた顔を戻す岡本さんに言う。



「あと……傷がまだ痛むかもしれないけど、なるべく歩くようにしてね。
最近ずっと動いてないみたいだから。
寝たきりは体に悪いので」


「分かった」


「どこかに行く時は看護師さんか僕に一言言って下さい。
病院の外には出ないで下さい」



聞いた途端、岡本さんの視線が僕の方へと上がった。


相変わらず無表情だけれど。


必要最小限しか動いていない岡本さん。



そろそろ傷の感覚にも慣れながら動いて行かないといけない。



痛くて、動くのが困難なのかもしれないけれど。



それでも、胸の痛みを我慢してでも岡本さんはどっかにふらふらと言ってしまうような気がして。



念を押すために行った言葉だった。



死んだほうが良かった、と言ったくらいだから。



無いだろうと思うけど……本当にそうする可能性だって0じゃない。



まだ、しばらく目が離せないんだ。