……そんな顔しないで欲しい。



そんな、人生を諦めたような。



せっかく手術が成功して、これから楽しい事が沢山あるんだから。


「……傷、気にしない人だって沢山いるよ?」



皆が皆岡本さんが思っているような人ばかりじゃないから。




「高橋には分かんないよ。あたしの気持ちなんて」



慰めで言ったと思ったらしい。



クッと睨み付けてくる。



だけど、その瞳にも次第に涙が溜まっていき今にも流れてしまいそうで。



我慢する為に、天井の一点をひらすら見つめる岡本さん。


その努力も虚しく、涙は目尻からゆっくりと流れて、シーツにポツと音を立てながら落ちた。



……流れた涙の跡をじっと見つめると、再びゆっくりと呼吸をしながら岡本さんが口を開く。




「……高橋は良かったね。
もうあたしの我が儘に付き合う事も無いし、抜け出して発作起こされたら……って心配する必要も無いし、休日だって休める」


「岡本さん……」


「それに、高橋の経験値が上がったじゃん。
こういう症例の手術を執刀して成功したって……次の手術に自信持てるでしょ?高橋にとって良いことばっかで良かったね」




本気でそう思っているの?



僕が、自分にとって良い事ばかりで喜んでいると……?



喜ぶはずなんか無いのに。




「高橋には悪いけど……手術するくらいなら、あのまま死んだ方が良かった」



またシーツに落ちていく涙。



心電図の音に邪魔されながらも、岡本さんが発した声はしっかりと僕の耳に届いた。