一人で泣かせたくない。
……だから、傍にいる。
敢えて視線に乗せられた想いに気付かないふりをして、岡本さんの顔の横にしゃがみ込む。
「……なんで手術したの」
腕をベッドに付けて、未だ少し高い僕の方に顔を僅かに動かして、ゆっくり聞く。
「発作起こして危険な状態だったんだ」
今にも心臓が停止する所だった。
「我慢したら治まったかもしれないでしょ?」
真っ直ぐ言い返してくる岡本さん。
「意識、失ったの覚えてる?
このままだと心臓が止まる所だったんだ。だから、急いで手術した」
手術しない、なんて選択肢は無い位に切羽詰まった状況だった。
「高橋が切ったの……?」
一度胸の方に視線を向けて、僕に戻す。
「……ごめん」
僕が、切ったよ。
その胸に、綺麗だった肌に。
一生見るたびに嫌な思いをするだろう、苦しませる事になるだろう傷を。
「……もう、あたしの人生終わった」
自嘲気味に笑う岡本さん。
「そんな事ないよ」
そんな事無い。



