優しく微笑んだお父さんは、椅子に置かれていた岡本さんのお母さんのバックを手に取る。



そして、お母さんに退室するよう促した。



「……また明日ね」



ゆっくりと頷く岡本さん。



ただそれだけの動作だけど、痛いのだろう。



顔を微かに歪めた。



「失礼します」



二人は僕にもう一度頭を下げて部屋を出て行った。




まだ傍に付いていたいはず。



命に関わる何時間もの手術を受けた自分の子の傍に今日くらい居てあげたいと、親なら思うはず。




それなのに気持ちを抑えて岡本さんの希望を叶えようと渋々帰る。



いてあげたいと言う気持ちが二人の背中から感じてきた。



二人が帰っていった出口を見ていると、視線を感じて岡本さんへと視線を落とす。




岡本さんは、僕にも出ていけ、と言いたそうに視線で伝えていた。



一人になりたい、とさっき岡本さんの意志は聞いた。




でも、ここで一人きりにさせた所で岡本さんはどうする?



突き付けられた現実に、痛みに耐えながら泣くつもりでしょ?