いつも笑っていた岡本さんのお母さんの泣き顔を見るのは心が痛む。



「高橋先生が謝る事無いです。あの子が勝手に抜け出したんだから。

それに……高橋先生今日お休みだったんでしょう?わざわざ迎えにも行ってもらって……本当にありがとうございました」


「いえ……」


「……さ、心ちゃんの所へ行きましょう。もう少ししたら麻酔が切れて目が覚めると思いますよ」



重苦しかった空気を変えたのは清水先生。



清水先生が席を立ったのを見て、岡本さんのご両親も立ち上がって出ていく。



その後ろから、僕は付いていく事しか出来なかった。



「僕達は医局にいるので、目が覚めたら教えて下さい」

清水先生は心電図のモニターを確認した後、ご両親に告げてベッドから離れる。


「……目が覚めて一番にご両親の顔を見せて安心させてあげた方が良い」



まだ麻酔から目が覚めない岡本さんの横に立ち、顔を覗き込んでいるご両親。




僕の方にこそっと顔を寄せて囁いた清水先生に、頷き、離れる。



目を覚ました彼女は、どう思うだろうか。



頭の中を支配してしまう問題。