「……どしたの?」
何も反応しない僕に、岡本さんは首を傾げる。
それに気付いて目を動かすと、瞬きするのもしばらく忘れていたらしく目が乾いていた。
それを瞬きを繰り返しながら視線を泳がし元に戻す。
「今の、感動しました……高橋先生って」
クリアになった視界で岡本さんを捕える。
「そこ?」
岡本さんは可笑しそうにクスっと笑った。
「や……まさか先生って言われる日が来るとは思ってなかったんで」
「もう呼ぶつもり無いから」
照れたのか、素っ気なく返された。
それでも嬉しい。
「先生っていいですねー心」
「だから!いい加減呼び捨て止めてくんない?ムカつく」
ムカつく、と言いながらも反応してくれる。
多分、無意識になってしまうんだろうけど。
そして、一度逸らした視線をもう一度僕に向けながら、続ける。
「高橋医者でしょ?
担当患者に呼び捨てって言い訳?」



