電話はもう切れていたらしく、岡本さんは携帯の終話ボタンを押して閉じた。



「…ごめん……」


そして、小さく呟く。


「切れてた?」


岡本さんは、まだ僕の方を見ないまま頷いた。



「そっか」



それに続く次の言葉を探すけれど、思いつかない。



まず、この僕が一方的に掴んでいるように見える腕をどうにかしようか……。




今は大人しいけれど、岡本さんが嫌がり始めれば僕は明らかに変質者と思われる。



それは困る。




取り敢えず、一度手を離して岡本さんの目の前に差し出した。




不思議そうに手を見つめる岡本さんに、笑って言う。



「行きますよ。
手、もう逃がさないから」



手離すと岡本さん逃げるかもしれないし、繋いどけばどうにかなるかな、と。



嫌がるかと思っていたけれど、さっき怒鳴ってしまった事が効いているのか。




岡本さんは珍しく素直に手を差し出して僕の手をゆっくりと握った。