両手で握って缶の暖かさを感じている岡本さんを見ながら、自分も冷えた手を温める。



さ、移動しますか。



話し合う場所へと歩きだせば



「ちょっと、どこ行くの?」




長椅子に座ったまま岡本さんが僕に問い掛ける。




「岡本さんの希望どおり、二人で話せる所」




ニヤっと口角を上げて笑って歩きだす。




……ムカつくって絶対思っているだろうな…と思いながら。




岡本さんを連れて向かったのは入院病棟とは反対側にある検査をする時に利用する棟。




レントゲン室の奥、少し行った所に1つだけ置かれている長椅子。



「……こんなとこに長椅子あったんだ」




検査で絶対に利用する場所なのに、岡本さんも今まで気付かなかったらしい。



長椅子を見て感心したように呟いた。



僕も、少し前に見つけたばかりなんだ。




誰もこんな所に座らないだろう……と思うような場所に置かれていて。


ゆっくり休みたい時にここだと静かでいいな…と思ってたんだ。