〜初恋〜アナタに溺れる

健哉はディスプレイを確認するなり大きなため息を落とした。

そして、

「取引先だ…ちょっとごめん。」

立ち上がって、入口へと移動した。

一人になった私は健哉が席を外したことで、視界がひらけた先をぼんやり眺めていた。

…猛の背中を。

フッと甦るあの頃。

桜並木を学校帰りに二人で歩いたあの日…。

風に乗ってヒラヒラと桜が舞って、私の髪に落ちたんだ。

……−−−−−−


「あ…髪についてる」

クスッと笑って桜の花びらを取ろうと、私の髪に触れる。

たったそれだけの動作で私の心拍数は上がってしまう。

なんで親友なんだろう…

どうして…恋人になれないんだろう…って。

繰り返し思うんだ。

私の髪についていた桜は猛の指からスルリと地面に落ちた。

その桜が自分に見えて…急に悲しくなる。

「桜って…はかないよね。」

地面に落ちた桜を見つめる。

「ん?」

「だってさ、咲いてる時はみんなに愛されて凛としてるのに、散ったら地面に落ちて誰も見向きもしない…」

「そうだな…。でも、散ったからって終わるわけじゃない。毎年綺麗に咲くだろ?散るのは綺麗に咲くための準備って思えばいいんじゃない?」

「うん。なんか、猛じゃないみたい」

「おまえなぁ、人が真面目に話してんのにさぁ…」

そのあと、しばらく大笑いしたっけ。

猛の言葉が嬉しくて、ちょっとくすぐったくて…