〜初恋〜アナタに溺れる

私は猛の方に向きを変える。

…一瞬、ほんの一瞬驚いて、またすぐ表情を戻した。

「もしかして…渋谷?」

なんて、白々しく。

しかも名字で。

だから私も…

「久しぶりね。川上くん。さっき、健哉と話してたとこよ」

チラッと健哉に視線を移す。

「あぁ。おまえが結婚するって話を麻乃に教えたんだよ」

「そうなのよ。おめでとう川上くん」

「あ…あぁ。ありがとう…」

じゃぁ…。そう言って猛はカウンターの席へ腰を下ろした。

良かったのかな…。

これで。

健哉に言わなかった。

猛も口にしなかったから…、というか私に合わせただけかもしれないけど。

「もっと再会を驚くと思ったのに、案外普通なんだな…」

カウンターに座った猛の後ろ姿を見る。

「女同士じゃないから…かな?」

「ふ〜ん、そういうもん?」

「そういうもんじゃない?」

イマイチ納得していない健哉は、不満そうな顔で頷いた。

ブーッ…ブーッ…ブーッ…

リズムよく健哉の携帯がスーツの内ポケットから響く。

私はふと、腕時計を見た。

−11時…。

嫌な予感。