ごめんなさい。
私は二人に何も告げず…
二人の前から姿を消した。
それしか思い付かなかった。
二人に手紙を書いて、来たら渡して欲しいと、担当だった看護師さんにお願いした。
「…本当にいいの?黙ったままで」
担当の看護師さんは私と歳が近い。
そのせいもあって話しやすかったから、沢山聞いて貰ったんだ。
「…いいの。これが1番。」
「でも…。せっかく思い出したのに?」
そう。
私はあの会話を聞いた日から…少しずつ、思い出した。
事故の前の記憶。
猛との時間…
絵里香への思い…
「うん。だって元の形に収まるんだから…」
「猛くんの事、好きなのに忘れられる?」
それは…きっと無理。
だから…忘れない。
「忘れないよ。多分…きっとずっと好きだから。それより、楓さんも素直にならなきゃね?」
「えっ?!」
不意をつかれたのか、アタフタする楓さん。
「知ってるよ。日比野先生の事好きなんでしょ?」
ふふっ。
図星みたいね。
「ち…違うって!全然、あんなの好きじゃないよ!」
否定してもダメ。
顔みたら分かるもん。
私じゃなくても…恐らくみんな知ってるよ。
「ちゃんと素直にならなきゃ。意地張ってもいいことないよ?」
私みたいになっちゃうんだから。