でも、甘えちゃいけないの。


だって、猛は…私の親友の婚約者なんだもん。


だからさ。


『大丈夫だよ。何でもないから』


涙を堪えて明るい声で言った。


そしたら、本当に大丈夫な気がしてきたの。


『…全く。分かったよ。じゃぁ、なんかあったら電話しろよ?』


『うん、ありがと』


電話を切って…私はまた泣いた。

猛の優しさに触れたから…。


水でも飲もう。

少しは落ち着けるかもしれない。


そう思って、立ち上がった時だった。


―ピンポーン…―


え?

こんな時間に?


部屋の時計はもうすぐ夜の11時。


音を立てずにこっそりドアに近づいて、その小さな窓を覗いた。



ん????

えっ?!


そこにいたのは…


…ガチャッ…


「…たけ…る…、何で?」


呆れたような顔ではぁ…と溜息をつく。


「ひでぇ顔…。全然大丈夫じゃねぇじゃん。」


そう言って、私の頬に触れた。


その瞬間に、張り詰めていた糸がプツリと切れたんだ。


理性がガラガラと音をたてて崩れる。