さぁ、跪いて快楽を乞え!

「台詞は全て覚えたんですか?」

「勿論。俺を誰だと思っているんだ」

「ただの馬鹿だと認識しておりますが」

「お前なあ……」

「嘘は吐いていませんよ?」

「少し黙れ」

「否定しないんですね」

「肯定もしないがな!」

「はいはい。……ところで劇の練習は順調なんですか?」

「……まぁまぁだ」

「ほう? では、この私がお手伝い致しましょうか?」

「え?」

その言葉と共に、橘の右腕が薫の細い腰に巻かれ、左手は薫の顎を固定し、顔が近付く……。

「例えばお伽噺によくありがちなキスシーン……」

互いの唇まであと数センチ……。

「……っ!」

薫が目を固く閉じ、口をぎゅっと結び、体を堅くする。

「冗談ですよ」

クスクスという笑い声とともに、橘の顔が離れ、腕も解かれる。

「おっ……おまえなぁっ!?」

顔を真っ赤に染め、口を金魚のようにパクパクとする主人。

だから、冗談ですって。

「そんな顔してると間抜けな顔がさらに間抜けになりますねぇ」

「うるせぇっ!!」