『理沙子、これが私の気持ちだ…』
息子よりもさらに不器用な愛しいヒトが、一株の花に乗せて私にくれたモノ。
何年経とうが忘れもシナイ…、愛おしい貴方のくれた一言一句…――
―――――――…
「理沙子ちゃん、貴方ラッキーよ!
今日は、たまたま東条グループの副社長がお見えなの。
撮影現場にも顔を出されるそうだから、挨拶はしっかりね?」
「はーい、分かりました」
ヘアメイクさんにメイクを施して貰っていると、繰り返されたこのやり取り。
当時の私は、女優として少しずつキャリアを積んでいたトキで。
マネージャーと事務所の社長が興奮気味に話されても、東条グループに興味など持てなかった。
ようやく映画やドラマで主役を演じられるようになって、仕事がすべてだったもの。
スポンサーやスタッフさんたちへの挨拶同様、笑顔を振りまけば良いと思っていたのに…。

