腰元に置かれていた拓海の手は、最愛の蘭ちゃんの手をキュッと握り締めて。
離れるコトなく2人は、今日もまた会社へと笑顔で向かった…――
そんな蘭ちゃんの後姿を見ていると、自分の若かりし頃を思い出すけれど。
でも…、私が嫁いだばかりのトキより、遥かに落ち着いているのよねぇ。
蘭ちゃんが色々な“しきたり”を覚えたトキが楽しみね・・・
2人の姿を見送ったあと、再びお庭の手入れを再開させれば…。
「奥様、手がお汚れではございませんか…!
お寒いですから、こちらは私が…」
東条家専属の庭師の槙(マキ)さんが私を見つけ、慌てて駆け寄って来た。
「お気遣いありがとう…、だけれど此方だけは私の仕事ですから…。
もう少しで終えますから、どうぞお気になさらないで下さいね?」
「かしこまりました、それでは失礼いたします」
「いつもお疲れ様です、ありがとう…」
私の言葉に頷いた槙さんは、別の木々たちを寒さから保護させ始めた。

