フツー、この状況で寝るか…?

朝から俺、振り回されっぱなしだろ。



この個室に入ってまだそんなに時間も経っていない。

先に、寝るから肩を貸せと言ったのは俺の方だが、もちろん本気で寝るつもりなんてなかった。

ただ、菜都に触れていたかっただけ。狭いソファに身を寄せていると、我慢できなかったからだ。


それなのに、まさか菜都の方がマジ寝するとは…。


最初こそ寄りかかる俺に菜都もパニックになっていたが、次第に大人しくなり、そして、ユラユラ揺れ始め、寝息を立てはじめた。



……あり得ねえだろ。




「襲うぞコラ」


物騒な台詞を吐いても、菜都はいたって平和そうにスヤスヤ眠っている。

これなら、マジで襲っても文句は言えないだろう。


隣で眠るその穏やかな寝顔をジッと見入った。

人の気も知らず、幸せそうに眠りやがって…。


とりあえず、ラクな体勢にさせるため、菜都の腰に腕を回し俺の方に引き寄せた。


コテン、と菜都の頭が肩に乗る。

滑らかな髪が肌をくすぐり、ふわっと甘い香りに包まれる。

ピタリと寄り添うように身体を預けられ、その柔らかな感触に手が離れるはずがない。


……拷問だ。