あ、頭がいたい…。

早くも、先生のパワーは全開だ。

ゴホゴホと咳をしていると、先生はそっと私の頭を撫でてきた。


「お母さんから連絡もらって、マジで焦った」

「ただの風邪なのに…」

一体お母さんはどういう説明をしたんだろう…。重病じゃないんだから…。


「せんせ…、仕事は…?」

「すっぽかして来た」

「そんなっ…私は大丈夫だから、早く戻って…」

「こんな結衣を一人にするわけないだろ。ここにいる」

「ほんとに、寝てれば治りますから…」

「いや、ここにいる。それに、今日は結衣に会えると思って昨日のうちに急ぎの仕事は片付けておいたから」

「でもっ…」

言い返そうとしたところで、先生は「いいからいいから」と、ポンポンと私の頭を撫でる。たぶん、もう仕事に戻る気はないらしい。

仕方ない…。

こうなってしまったら、いくら言ってもムダだ。私も説得するほどの体力もないし…。


「ごめんなさい…。あと、…今日のデートも…」

一応、今日の予定もキャンセルになったことを謝っておいた。こんな状態じゃ、何もできない。


「結衣に会えればそれでいい。それに元々、どこか行く予定もなかったし」

「そうなの…?」

「ああ。どこか行くより、家でイチャつきたかっただけ」

「イっ…!?」

そんなことをニコニコと微笑みながら平然と言う先生に、カーッと顔が赤くなってしまう。


熱のせいで、余計にあつい。

この調子だと、一向に熱は下がらない。


………もう、寝よう。


私の反応を見て満足そうに笑う先生からプイッと顔をそらし、ムリヤリ目を瞑った。