先生の香りに、全身が包まれる。

ふわふわとした幸福感を感じていると、先生は唇を離しながら私の頭を優しく撫でた。


「最高の誕生日だ」

そう幸せそうに囁かれたら、自然と私の頬は赤く染まっていく。何かに縋りたくて、ギュッと先生のシャツを握り締めた。


「ホントですか…?何にも用意してなかったから…」

「俺は、結衣がいれば一番幸せ」

そんな甘い台詞を吐きながら、先生は額や頬に次々とキスを落としてくる。


「あ、あの…前に先生が言ったこと……。心の準備ができてなくて、……まだ、奥さんにはなれないけど…」

「ああ」

「先生が、私を必要としてくれるなら、……そばにいますから」

恥ずかしがりながらも、あの時の返事をたどたどしく伝える私の言葉に、先生は満足そうに微笑んで私を抱き締めた。




そして、しばらくの間この甘い空気に包まれていた時、先生はふと顔を上げた。


「そういや、誕生日にこうして来てくれたってことは、今日は俺の好きにしていいってこと?」

「………はい?」

「だって、結衣がプレゼントなんだろ?」

「え…?」

「飢えてる恋人の前に、身一つで来るなんて、そうとしか考えられない」

「えっ!?ちょっと先生っ…!?」

まるで楽しい遊びを見つけたかのように、先生は目を輝かせながら、再び私を横抱きにして部屋の中央にあるベッドまでスタスタ向かっている。


「それに、しばらく結衣に触れてなかったんだ。もう限界」

「せ、先生っ…!?」

「この俺が何もしないで帰すわけないだろ」


そう言いながらベッドへ降ろされ先生が私に覆い被さった時、ふと、金一郎さんや志銅さんの言葉が頭をよぎった。


「銀次が一番喜ぶプレゼントは、結衣ちゃん自身」


結局、2人の言う通りになってしまったことに苦笑をもらしたけど、私を大切そうに抱き締める先生に、素直に身を任せた―――…。








★end.★