もう、我慢できねえ…。


「……結衣、帰ろ?」

唇を離し、耳元で囁くと、結衣が慌てたように声をあげた。


「帰るって…まだ、花火始まったばかり…!!」

「ああ。でも、もういい」

そもそも、花火など見てなかったし。

それに、俺の目的は祭りでも花火でもなく、浴衣の結衣だ。

早く連れて帰って、ゆっくり堪能したい。


いつも以上に煽られ、はやる気持ちが抑えられず、露わになっている首筋に唇を這わすと、腕の中の結衣が一層慌てだした。


「…せ、先生っ!!何してるんですか!?」

「……早く、脱がせたい」

「ちょっ…!!」

逃げようとする結衣をガッチリと抱きとめ、ニヤリと微笑みかけた。


「早く帰らねえと、このまま続けるぞ」

もちろんウソだが、その言葉に結衣はギョッと目を見開いている。

俺ならやりかねない、と思ってるのだろうか。


「か、帰ります!!帰るから!!」

「よし」

無理やりだが、結衣の気が変わらないうちにさっさと立ち上がり、結衣の手を引いた。


「また来年、見に来よう」

「もう来ません!!」


屋台も見ず、花火も開始からわずか十数分で帰るなんて、祭りに来た意味など本当になかったかもしれない。

結衣も散々だっただろう。



でも、俺の楽しみはまだまだこれからだ。

祭りの熱気にも負けないほど、結衣との熱い夜が待っている。


繋いだ手に力を込め、満足気に結衣に微笑みかけながら、祭りの会場をあとにした。






☆end.☆