*エトセトラ*

「おい!向かいの個室、女子だけのグループで来てるぞ!さっき可愛い女の子がいてさー」

「マジっ!?あとで合流させてもらおうぜ!」

「おい誰か声かけろよ!」


その瞬間、先ほどまでの俺の会話はそっちのけで、皆、その「向かいの個室の女子グループ」に一気に食い付いた。

もう誰も俺を見ていない。


ぐったりしながらため息を吐いていると、個室の様子を伺っている男が俺に向かって声を上げた。


「おい黒崎!お前が声かけてこい!」

「…………は?」

「ちょうどいい機会だ!たまには彼女以外の女と遊ぶぞ!」

「…………ちょっと待て。マジで言ってんのか?」

「マジに決まってんだろ!」


………あり得ない。

他の女と遊ぶ?

考えただけで不快感が走り、ぞわぞわと拒絶反応が起こる。さっさとこの場から逃げたい。


「お前らだけで行ってこい。俺は帰るから」

「まぁそう言わず!黒崎が声かけたら絶対オッケーもらえるから!」

「帰るって言ってんだろ」

「頼む!俺たちのために!声かけてきてくれるだけでいい!」

「絶対しない」

「頼むってー!」


付き合ってらんね……

皆から懇願されるが、絶対にムリだ。こいつらの思考が考えられない。

マジで帰ろう。

それに、そろそろ帰ろうと思っていた。モカの女子会とやらが終わっていたら迎えに行こう。

そんなことを考えていると、いつの間にか部員たちに周りを取り囲まれ、腕をガシッと掴まれた。


「……何だ?」

「黒崎、行ってこい!多数決でお前の負けだ!」

「ちょっ、おいっ、」

そして、そのまま引き摺られて、部屋の外へと投げ出される。

「健闘を祈る!オッケーもらえたら帰ってこい!」

そう言って一方的に扉は閉まった。