例え、ろくでもない恋愛遍歴を持っている奴がいても、人のことには口を挟まない。

正直、他の奴の恋愛なんてどうでもいいからだ。

低俗な会話が続くなか、一貫して黙って聞くだけの俺に、次第にまわりの奴らが目を付け始めた。


「おい!黒崎はどうなんだよ!」

「男前の伝説聞きてー!」


お前も参加しろ、という期待に満ちた目を向けられている。


……どうやら、次の標的は俺らしい。


ガタイのいい男たちが「女」の話に目を輝かせながら、俺から何か聞き出そうと身を乗り出してくる。


「なぁ、何かねえの!?」

「何かって?」

「黒崎も彼女いるだろ?何かねえのかよ!」

「だから、何かって何だよ」

「何かあるだろっ!?彼女の不満とかねえのっ!?」

「不満?ないな」

「まったく?うまくいってんの?」

「ああ」


不満なんてあるはずもない。俺の方が惚れてるというのに。

「はぁー、つまんねー」

「正直に言えよ!」

場を盛り下げているのか、何も語ることがない俺に皆が冷ややかな視線を向けてくる。


「じゃあさ、他の女は?」

「他の女?何だそれ」

「とぼけんなって!黒崎の容姿だったら、他にも女がほっとかねえだろ!彼女何人いんの?」

「何人って…。いるわけねえだろ」

「うそだろっ!?もったいねえ!黒崎、お前だったら何人でもいけるぞ!」

「……1人で十分だ」


呆れ気味に答えていると、後藤が「黒崎、モカちゃんにベタ惚れだもんな!」と笑う。


……否定はしないがお前が言うな。

ジロリと後藤を睨むと、周りが次第に「モカちゃん」に食い付き始めた。