酔っ払いの声が飛び交う騒々しい店内。店員も声を張り上げて、忙しなく駆け回っている。

安くて美味いと評判のこの居酒屋は、金の無い学生をはじめとした若者が多く集う人気の店らしい。

現に今、個室もまったく意味をなさないほど店全体が宴会場と化している。

BGMもかき消されるほど、うるさい。



そんな店に集まっているのは、俺を含めた大学のサッカー部の連中。

前に一度スケットとして試合に出場したことから、度々サッカー部の集まりに誘われ、都合がつけば時々こうして顔を出している。


むさくるしい男たちが集まって何を話すのかといえば、やはり大抵はサッカーの話や趣味の話。時にはマジメに大学生活や、将来の話をすることもある。

ほとんどがくだらない話で終わるが、盛り上がってくると次第に話の方向はある話題に集中していき――…


つまり、「女」の話。


「彼女がマジ口うるさくて――…」

「勝手に携帯見られて――…」

「ワガママばっかりで――…」

ここぞとばかりに言いたいことを言いまくっている男達。不満、文句ばかりで、彼女をベタ褒めする奴なんていない。

さらになかには、

「コンパした女と何度か遊んで――…」

「彼女に浮気がバレて――…」

彼女以外の女と遊びまくっていることを武勇伝として、これ見よがしに披露し合っている奴も多い。その真偽は分からないが。

しかし、そんな最低な話にも誰も責めることなく、「お前ら最悪だなー」と皆笑い飛ばしているだけだ。


もちろん、俺はそれらの話題に同調する気もないので、黙って聞くだけ。頷くことも、否定することも、笑い飛ばすこともしない。

そうまでして何故彼女という存在を作るのかと不可思議に思いながら、ただ黙って聞くだけだ。