そして、怒りが徐々に鎮まってきた頃、モカがさっきの後藤用のチョコレートを見ながら困った顔をした。

「どうしよ、もったいないな…」

「俺が食うから」

「え、でも、こっちのはすごく甘いよ…?」

「甘いって…」


わざわざ違うものを作ったことにもまたムカつくけど、俺と同じものでもやっぱりムカつくかもしれない。

どっちにしろムカつくみたいだ。

でも、これ以上言うとさすがにモカも泣いてしまうかもしれないと思い、グッと堪えた。


「いいから、俺が全部食う」

「全部!?甘いよ!?」

驚くような顔を見せるモカだけど、おそらく余裕で全部食える。

甘いものが嫌いなのは事実だが、モカが作ったものなら話は別。何故だか食える。しかもうまい。

たぶん、モカが作ったから。理由はその一点に限る。


箱を開け、ためらいなくパクパクと食べ始める俺を、モカは驚きながら見ている。


「大丈夫…?……おいしい?」

「ああ、うまい」

ほら、とモカの口にもチョコレートを一つ運ぶ。

「うまいだろ?」

作った張本人に言うのもどうかと思うが。

モカも笑いながら、「うん、我ながら上出来」と満足そうに頷く。




そして、2人で一緒にチョコレートを食べて。ついでに兄貴の分のチョコレートも食べて。

こっちの方はさすがにモカも怒ったけど、やっぱり兄貴でも手作りチョコはイヤで。

近所のスーパーで買えばいい、となだめて、またチョコを食う。

途中、モカの口の端にチョコが付いているのを見つけて、キスをして。

またキスが止まらなくなって。

照れて、怒るモカに、やっぱり何度もキスをして。

チョコを食って、キスをして、その繰り返し。


キスの味もチョコレートに染まるほど、ひたすら、チョコレートを食った1日だった。



















★おわり★