love bye love

「本当、バカなんじゃねーか?」

しゃがみこんだ私を、上から傘の影が包む。


それに、この声は…


「尚くっ…!」

待ち望んだ声が上からして、バっと上を見上げるとそこにいたのは…


「こんな寒いところで、そんな薄着で。しかも雨ん中だぞ?死にてーのか?」

「え、え?誰、ですか?」

グイっと腕をつかまれ、無理やり立たされる。

「あのっ!私待ち合わせしててっ、だから」

そこにいたのは、声は同じだけど姿も形も尚君とは正反対と言ってもいい男の人だった。

「待ち合わせ?誰かくんのか?お前さっきからそこに立ってるだろ?しかも泣いてるし」


「泣いてません!それに絶対に来ます!ずっと待ってたんだもん!」


半年間、ずっと待ってたんだもん。

「…」

私がそう叫ぶと、隣にいる人は黙ってしまった。

「あ、あの。私、もう少し待ちますから、大丈夫です。ありがとうございました」


きっと、寒い中傘もささずに立っている私を見て、心配してくれたんだ。

みかけよりも優しい人なんだ。


「いーよ。俺も暇だし一緒に待っててやるよ。傘ねーんだろ?」

「へ?」

今、なんと?

「キョトンとしてんじゃねーよ?聞こえたか?」


いやいやいや!そんな訳には!!


「いいです!いいです!悪いです!!」


ブンブンと胸の前で手を振る。


「一人で待つよりも、気がまぎれるだろ?」


そう言った男の人に、不覚にも尚君の優しさを思い出してしまった。


「また、泣いてるし」


「ないてまじぇんっ」


ズビっと鼻をすすると、隣の男の人がクスっと笑った気がした。


傘があるだけで、こんなにも温かいんだ。


…それとも隣に人がいてくれているからなのかな?