「アドレス…携帯電話の?
私、覚えてないです」

「え?でも持ってるでしょ?
貸してくれれば登録するよ~」
「あ、家にあります」

ケータイを持ち歩かない?

何でそんなウソをつくのかしら?

「ちょっとカバン貸してよ♪」
そう言って嘉穂が手をかけると、

「っ、触るな!」

「いったぁ…」

辞書みたいな厚さの本で手を叩かれた。

「嘉穂!大丈夫?」
「痛そー…」

二人が嘉穂を庇う。

「渡辺さんってそういう人だったんだぁ…」
「ひ、酷い、よぉ…」

涙を流し始める嘉穂。

演技が上手だから、あっという間に周りは騙される。

「渡辺さん酷いね~」
「もっと良い人だと思ってた…」
「顔に騙されたわ~」