「あぁ、あと。朝餉前に君のことを幹部連中には紹介するつもりだから、心して置くように。
それまでに、着物を準備させておくから、そちらに着替えておくんだよ?」
「あ、はい!」
この身が無事なら何でもいい。
沖田は安心しきった砂柚の手を引き部屋を出て行った。
「近藤さん!あんた何考えてる?!
あの女の話は滅茶苦茶じゃねぇかよ!」
二人きりとなった部屋で土方が口火を切った。
「トシ……。お前も動揺することがあるんだな。」
「動揺?俺が?」
「そうだ。お前らしくもない。総司がお前の所に連れてくるなんて余程のことなのだろう?
あの女子は、何か隠している。それは確かだろう。
だが、おかしいとは思わないか?
こんな京でメリケンのような恰好をすれば逆に斬られるかもしれんのだ。死に行きたいのしか思えん。」
「だから、それは俺達を油断させ近づくためで。」
近藤は首を振った。
「まだ、それは分からんだろう。」
「でもよ!」
不満を洩らす幼なじみはまだ近藤の意図に気付いていないようだ。
「だから、泳がせるんだ。」
「は?お…泳がせる?」
「名字もあり、メリケンの物を入手できる人物。私だって、疑っていないわけではないさ。
でも、もしかしたら……」
「あぁ、俺達の敵と繋がってるかもしれねぇな。」
納得が言ったと土方は、不敵な笑みを零した。
「やはり、可愛殿が女子だったことに動揺したのか?」
いつもの土方であれば、こんな思惑を考えるのは常だ。
おそらく百戦錬磨とも呼ばれる彼にとって、その事実は衝撃を受けるものだったのだろう。
「そ……それは。だいたい、何であんたが分るんだよ?」
「はっははは、トシ。苦虫を噛み潰したような顔になってるぞ。」
「うっせぇーよ!大きな世話だッ!」
二人がそんな話をしているとは露知らず…。
