だって………
私は今一人だから。
笑うしかないんだ。
そうでもしなきゃ、
この世界では一人だという現実に強く衝撃を受け、脆く、弱く。
心が折れて壊れてしまうから………。
「ほぉ、先に戻った隊士から聞いちゃあいたが…てめぇの恰好は確かに怪しいの一言だな。」
砂柚は鬼副長と呼ばれ隊士達からも恐れられる土方歳三と対面していた。
「で?総司。
こんな野郎は奉行所に突き出しゃあ一発で済むことじゃねぇか。厄介事増やすんじゃねぇよ。」
「でもね、土方さん。彼、私に気配を微塵も感じさせなかったんですよ。……私の傍にくるまで。」
沖田に耳打ちされた土方の顔が険しくなる。
「何ぃ?こいつが……か?」
訝しげに向かい合いにいる砂柚を見た。
それが真実ならば、こいつ…ただ者じゃない。
だが、土方にはただの童にしか見えない。
「お前、総司に近づいてこいつを殺すつもりだったのか?」
「こ……殺す!?どうして?!」
「何驚いてやがる。図星ってか?どうせ、長州のもんなんだろ?」
皮肉を浮かべる土方に言いかけて口を閉じた。
鋭い瞳が彼女を貫く。
砂柚の心臓は苦しいほどに激しく鼓動していた。
が………
「長州って何ですか?」
意にも介さず、にっこりと笑う砂柚に土方は瞳を丸くする。
「こんな状況で笑えるなんて大したたまじゃねぇか。」
すぅつと警戒を宿した瞳が細くなったその時。
「歳。入るぞ。」
襖が開き屈強な身体の男が現れた。厳つい顔をしていたが、柔らかい雰囲気を纏っている。
「近藤さん…何で来たんだ、くんなって言っておいただろう。」
「気になったものでな。」
